――― 「ただいま」 ―――
平日の3時。
私は、駅へと自転車を漕いでいる。
気温は上がり、全国的な真夏日。
5月になったばかりなのに、半袖ですむ。
駐輪場に止め、鍵を掛ける。
ここ最近は物騒になり、この片田舎でも盗難がある。
駅に入り切符を購入する。
片道400円の短い旅。
駅の売店は、もう知り合って長いおばちゃんが居る。
こんにちはと声を掛け、何処に行くのと聞かれる。
何時ものように珈琲が一缶、頼んでも無くても出てくる。
いや〜ちょっと〇×までと答えながらも、お金を用意する。
駅の構内には、私を含め5人ほどしかいない。
珈琲を飲みながら、おばちゃんとの会話を続ける。
そろそろ、結婚かい?とか
うちの娘どうだい?とか
そうだ、婿にくるかい?とか
まぁ、これも日常の一コマだろう。
―――間もなく、〇×行きが到着します。
年の若い駅員のよく通る声が構内に響く。
それじゃまた、と声をかけ改札に向かう。
西日がきつい中、私は電車に乗り込んだ。
ガタン、ゴトンと電車特有の音をバックに、私は外を見ている。
すでに田んぼには水が入り、もうすぐ田植えの時間だろう。
水の入った田んぼは、どこか美しさを感じさせる。
西日に照らされて、光が乱射している所為だろうか?
向かい合うタイプの4人席で、私は一人で座っている。
元々乗車人数の少ない電車であることは、帰ってきてからの恩恵のように思う。
田園風景そのままだなと呟き、日に照らされ輝く田んぼを見ていた。
目的の駅に到着する。
GWに入っていても、人数はあまりいない。
騒がしいことが日常の世界から、静寂を主とする世界へと来た。
自分が異邦人になったようで、時間がたったことを感じさせる。
何度も帰省しているはずなのに、今日は印象が違う。
何度も見た風景なのに、どこか違って目に映る。
落ち着いたのかな?と自問しながら、改札を通り抜ける。
時間はまだ4時。
西日はまだきつい。
駅の自販機で、またも珈琲を買う。
それを飲みながら南口へと向かう。
待ち合わせの時間までは、後20分ほどもある。
電車の都合だといえば、勿論そうだが。
これは不便だなと、愚痴る。
帰ってきてから、一番の問題かもしれない。
何処に行くのも電車で済んだところとは大きく違う。
南口の階段を下り、ある程度飾られた公園のベンチに座る。
桜も終わり、緑全開の公園を見ながら、煙草に火を点ける。
目の前のバスターミナルにある程度の人がバスを待っている。
学生、子供、老人、サラリーマン、派手なおねーさん。
本当に様々。
しかし、どこか安心感を感じる。
地元だからだろうか?
そんな事を思いつつも、煙草を吸い、珈琲を飲み、彼らを待っていた。
階段から、4人の姿が見える。
昨日電話で話したときより、帰ってきたんだという実感が湧く。
しかし、どうやらこちらには気が付いていないようだ。
席を立ち、煙草を灰皿に捨て、空き缶はそのままに。
私は彼らの元へと走っていった。
「――あっ久しぶり」
「おっ、元気してた?」
「よう!帰ってきたな」
「おう!帰ってきたぜ」
「あーお帰り?」
「おーただいま?」
「じゃ、行くか?」
「ああ、行きますか?」
時間がたち 離れていても
会えば わかる
会わなくとも わかる
そんな 関係
だから
―――ただいま。
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