――― 「何もない」 ―――
ひっそりとした夜、一人暗い部屋にいる。
布団を頭まで被り、横になっている。
眠いようで眠くない。
寝なくてはいけないのに寝れない。
目を閉じる。
見えるのは、瞼の裏の世界。
チカチカと赤や青の光が点いては消え、消えては点く。
その光は複雑に動き、追えば何故か奥に飛んで逃げていく。
実際は、眼球の動きに合わせているのかも知れないが、よくは分からない。
蛍のように、不規則に揺れる光。
何時も寝る時は、追いかけている。
やがて、それらの光景も無くなり、自分の呼吸音が聞こえてくる。
頭まで被った布団の所為か、呼吸は次第に荒々しくなる。
布団から顔を出し、一つ大きく深呼吸をする。
静かになる、いや、静かになった気がするだけだろうか。
落ち着いた呼吸音。
次に聞こえるのは、心臓の音であり流れる血の音。
腕を枕にした所為か、ドクドクと自分が聞こえる。
妙に心地の良いリズムにも聞こえるし、やけに耳障りにも聞こえる。
聞こえる音に神経を集中させる。
寝返りをうった直後は早い音。
少し時間を置けば落ち着いてくるのが分る。
自分の体が透けて見えるような感覚の中。
まどろむ自分を実感していた。
また、赤と青の光が見える。
点いては消え、消えては点く。
目を開ければ暗闇。
閉じた今も暗闇。
しかし、光は瞬いている。
逆側に寝転がり、また布団を被る。
次第に何もなくなってゆく。
一瞬、違うところに意識がいくのが分る。
ハッとして、意識を戻す。
そのままでいれば寝れたのにと、思わず眉が寄る。
明日のこと、今日のこと、昨日のこと。
家族のこと、友人のこと、恋人のこと。
テレビのニュース、好きなゲーム、ありえない妄想。
色々なこと、様々なこと。
浮んでは消えていく。
気持ちは上がり下がり、行ったり来たり。
あれ?俺寝てるのかな。
そう思った時は眠っていたのかもしれない。
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