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HOME>創作「ウチの仔」

「ウチの仔」 第一章 第二話 です

さてと、ウチの仔の第二話です。

追記にありますので、宜しければご覧になってください。

では、次回もウチの仔をよろしくお願いします。




朝の散歩から帰り、ユウは懸命に水を飲んでいる。
その様子を楽しげに見ながら、今日のことを考える。
大丈夫かな?と思わなくも無いが、まだ小さいし問題ないだろう。

父と母の支度は整ったようだ、ウチの中から私を呼ぶ声がする。
水を飲み終えご飯を催促するユウの綱を外し、脇に抱える。
ジタバタと暴れるが気にしない。

玄関先で父にユウを渡す。
ユウはより激しく暴れだすが気にしない。
玄関で母からスコップとビニール袋、新聞紙を受け取る。
車の鍵を開け、後部座席に新聞紙を敷いていく。
スコップとビニール袋は足元に置いておく。

出かける準備は整った。
これから向かう先でどういう反応をするのか楽しみだ。


―そう

――今日は

―――念願の?

――――病院デビュー!!





―――――― 「ウチの仔」 ――――――

――― 第一章 第二話 ――― 「飼うと云う事」 ―――



父が運転する車はスムーズに道を進んでいる。
ウチから10分ほどの所に、目的の動物病院がある。
車に慣れていないユウの事を第一に考え、速度は40キロ程しか出ていない。

車の窓は全開してある、ユウはドアに前足を乗せ顔を外に出している。
40キロ程度とは言っても、危険である事は変わりは無い。
散歩用の綱を付け直し、自分の手に巻きつけ落ちないようにしておく。

たかだか10分程の移動でも、ユウはハッハッと舌を出し、切なそうに呼吸している。
口元から出る涎が風に飛ばされて車内に飛んでくる。
すぐに、常備してあるティッシュペーパーで拭き取るが、このままでは吐いてしまいそうだ・・・

「親父、ユウ駄目そう・・・」
「何?じゃあ、止まるか」
「う~ん、もうすぐだろ?大丈夫だと思うけど・・・分からん」
「もうすぐ其処なんだし、大丈夫でしょ瑞樹」

母の一声で、そのまま進む事にしたが、どうにも呼吸音が怪しい。
ドンドンと涎の量も増えてきて、ドアはベッタリびっちょりだ・・・
親父がバックミラーでこちらの様子を確認した後に、溜息をついた。


なんとか無事吐かずには病院に着くことが出来た。
車からもろもろの道具を手にとり、ユウを抱えて車を降りる。
始めての場所に些か興奮気味のユウは、地面に降りると必死に匂いを嗅ぎ出す。
軽く周囲を回ってくると伝え、私は病院の周囲をユウと廻る事にした。

時間にしてみれば、五分程度の短い散歩を終えて、駐車場に戻る。
狙いどおりにユウは匂い付けとトイレを済ました。
朝ご飯を抜いてきたのは正解だったのだろう。
もし、朝ご飯を食べていれば、吐いたかも知れないし、病院内で出したかも知れない。
本に書いてあることも役立つときもあるなと実感していた。

「さて、これからが本番だぞユウ」

声を掛けるとこれから身に起きる事は分かっていないのだろう。
嬉しそうに尻尾を振りまくる。
その可愛さにクラクラしてくるが、今日は心を多少鬼にしなくてはいけない。

「よし、行きますか」

ユウを胸に抱き抱え、病院の扉の先に足を踏み入れた。


受付の人に、父と母が事情を説明して、説明を受けている。
私はユウを抱えたまま備え付けてあるソファーに腰掛け、病院内を観察する。
動物病院なんて、来たことも無かったが、やはり病院は病院独特の匂いがする。
ユウと言えば、隣のゲージの中にいる子猫が気になって仕方ないらしく、
さかんにゲージの方に行こうともがいている。
もちろん、他所様に迷惑を掛けるわけには行かないので、ガッチリと離さない。

不意に隣にいる結構いい年だろうと思う女性に話し掛けられる。
ユウに対して幾ばくかの興味を持ったようだ。
当り障りの無い、短い会話の中にも温かみを感じさせる内容だった。

「上山さん、診察室へどうぞ」

受付の女性の声が、待合室に響く。
ユウを抱え直し、子猫を連れた女性に軽く頭を下げ、挨拶を交わす。
父と母も同様に挨拶を交わした後、家族そろって診察室へと向かう。
扉を押し開き、診察に入ると其処には眉の薄い男性が私達を待っていた。

「――ああ、上山さん?・・・少し待っていてくださいね」
「はぁ・・・」

こちらに顔を向け確認すると、すぐに机に向き直り何かを書き始める。
恐らくは、私達の前に診察した患者さんの書類だろうが、
父の気の無い返事が、妙に雰囲気を重くしていた。
父のことだから、自分達が無視されているようで、不愉快なのだろう・・・

「あぁ、佐川さんにこれを――」
「――はい、では処方は・・・」

目の前の眉の薄い医師は、テキパキと看護婦さんに指示を与えた後、
席を立ち、こちらに振り向きながら、私達に尋ねた。

「上山さん・・・じゃ、その仔を此処に載せてください」

部屋の中央に置かれた台座にユウを載せろという。
その通りにユウを置き、眉の薄い医師の話を待つ。

「今日は、いえ、今日が初めての診察ですね、ご用件は予防接種ですか?」
「そうです、なにぶん私共も初めてのことですから勝手が分からず・・・」
「そうですか、じゃあ、まずは体重っと・・・後は血液サンプルを取りましょうか?」
「血液?・・・ですか?」
「ええ、今の健康状態の確認と、今後の健康状態の確認になりますから」

父と眉の薄い医師との会話は続く。
どうやら、人間の健康診断のようなこともするらしい。

ユウは何がどうなっているのか分かってないようで、台座の上から、
私に飛びつこうとして、ジタバタしている。
可愛らしい姿だが、おかげで体重を量る作業は多少の時間を必要とした。

「こら、ユウ暴れんな」
「ああ、ユウ君っていうのかい?ご家族の方ちょっと押さえていてもらえますか?」
「ええと、ユウは雌です・・・」
「ああ、そうなの、じゃ押さえていてくれますか」
「ええ、わかりました」

しかし、妙に苛々する話し方だ。
何故と聞かれても答え難いが、眉の薄い医師の態度と話し方に不快感を感じる。
診療に来たのだからと、今は自分を抑え、ユウを押さえる。
体重を量り終えた後に注射器を三本もって看護婦さんが登場する。

血液を採取し終えた後に、眉の薄い医師はやや厳しい目をしながら問い掛けてきた。

「上山さん、今日は混合ワクチンと狂犬病予防の摂取に来られたのですよね」

私達が犬を飼った事が無いため、近所の人、本の説明、
役所に届け出た時に言われたこと等を、掻い摘んで説明する。

「そうですか・・・では、説明をしますが―――」

医師の話によれば、混合ワクチンには複数種類があるらしい。
また、狂犬病は一年に一回摂取するものだとのこと。
今回は、五種の混合ワクチンと狂犬病の摂取を行う旨を伝えられた。
専門的な話が多く、理解するには至らなかったが、説明義務でもあるのだろうか?

摂取を終え、退室を促される。
眉の薄い医師に丁重に礼を述べ、ユウを抱えて部屋を出ようとする。

「―――上山さん」

不意に呼び止められドアから顔だけを出した格好で医師を伺う。

「犬を家族のように扱うのか、犬として扱うのかは飼い主次第です。
 ―――どうか、忘れないでください」

そんな、言葉が掛けられた。



なぜ、そんな事を言うのかと当時の私には解らなかった。

今現在も眉なし先生の言うことは正確には理解できていない。

いや、私の中の答えが出ていないのだろう。



受付で、診察料を支払い車に乗り込む。
帰りの車の中で、眉の薄い医師は私の中で「眉なし」と呼ぶことにした。
「クビキ動物病院」は徐々に遠ざかっていく。

注射を打たれ、意気消沈のユウを胸に抱える。
ユウの体温の暖かさを感じつつ、窓の外の流れる景色を眺めていた。






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