―――――― 「ウチの仔」 ――――――
―――――― 序章 ─―――――
高校二年も終わりに近づく。
季節は冬から春に変わろうとしていた。
家族で鍋を囲んでいる。
会話は無い。
鍋に夢中になっている訳ではない。
ある問題が家族の心を離していた。
ただ、鍋を咀嚼する音が台所に響く。
声を出さないでいると以外に音は響く。
そんな、どうでもいいことに気がついた。
夕飯を食べ終わり、無言のまま食器を流しへと運ぶ。
何時ものように食後の珈琲を入れようと食器棚に近づいた時、
「…犬…」
小さな、囁くような声で、父は確かに言った。
「…犬…を飼うことにした…」
これが、我が家の生活を変える転機だった。
――― 序章 幕間 ――― 「其々の事情」 ―――
唐突な話になるが、ウチの家族構成を紹介したい。
父:上山恒樹/年齢:50歳/職業:会社員/犬:大好き
母:上山洋子/年齢:48歳/職業:教職員/犬:どちらでもない
姉:上山夏海/年齢:19歳/身分:専門学生/犬:大嫌い
祖母:上山文代/年齢:81歳/身分:ご意見番/犬:好きだが嫌い
これが、我が上山家の家族構成だ…
表にすると何処にでもある家族構成だと思う。
いい忘れたが、「私」の事についても記述しておきたい。
私:上山瑞樹/年齢:17歳/身分:高校生/犬:大好き
昨日の晩、親戚の知り合いから犬をもらえる事になり家族で話し合った。
もちろん、かねてから犬を欲しいと願っていた私は喜び、即、賛成した。
しかし、祖母は生き物は死ぬから嫌だといい、
姉は、子供の時に襲われた経験から大反対。
母は、どちらでもないが世話をするのが結局、自分になるのでは…と懸念し、
父は、私と同じように犬を欲しがっていた。
元々、家族であれこれと話し合うような家族関係ではなかったため、
意見が纏まる事など無く、ただ皆が皆、自分の主張を通そうとするため、
次第に雰囲気は悪くなり、口論となってしまった…
結局、父の一言でその場は納まりかけたが、姉は反対の姿勢を崩すことは無かった。
母や祖母は、一応の同意は得られたものの、やはり釈然としない様子で、
夕飯後も家族でその話は、一切しなかった。
私は、夕飯後自室に戻り、一人犬がウチに来たときのことを想像し、
あーしよう、こうしよう、名前は…っともう飼う事を前提に、
アレコレ考えていた。
あの仔がウチに来る、一ヶ月程前のことである。
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