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短編――― 「あの電話」 ―――  

――― 「あの電話」 ―――



――― 真昼の夢 ―――



「空を飛びたかった」

そいつは、そう言った。



春も旬のこの時期、俺は友人との待ち合わせのために市内へと向かっていた。
人も少なくなる昼過ぎ、暖かくなってきた電車に揺られている。
ガタゴトと揺れる電車には、俺のように暇な人間が多いらしい。
ふと車内を見渡せば、学生服や老人、子供、背広姿と多種多様だ。
面白いのはほぼ全員下を向いていることだろうか?

「次は終点○×~、○×~」

家から約40分、眠気を誘う電車に揺られようやく着いた。
まばらな人ごみの中を進み、改札を抜け地下街へ出る。
店内放送によって、僅かに賑やかになる。
それを背景に、地上へと向け階段を登っていく。

「―――んっ」

顔を手で隠す。
今日の陽射しは中々にきつい。
家に閉じこもっていたわけではないが、眩しいものは眩しい。
目を細め、人気の増えた道を目的地に向かって歩き出した。



「空を飛びたかったんだ」

そいつは、確かにそう言った。



駅を背にして歩いていく。
平日の昼過ぎといえども、それなりの人で賑わっている。
日の眩しさに、やや憂鬱になりつつも先へと急ぐ。

十分ほど歩いた頃、総合デパートにたどり着く。
ここから、目的地へのバスが出ている。
バスの排気臭は苦手だが、金銭的にタクシーは使えない。
腕の時計を確認して、少し足早に停留所に向かって歩き出した。

「おっと、来たか」

目的地へのバスが、ゆっくりと旋回しながらこちらに向かってくる。
待ち時間の間に飲んでいた珈琲を屑箱へ入れる。
カランと乾いた音を耳にしながら、バスへと乗り込んだ。



「お前、頭大丈夫か?」

俺は、そう答えた。



乗り物酔いをしそうになりながら、30分ほどの道行を愉しむ。
幸いにも乗客は、俺を含めて三人しかいない。
ここで、化粧のきつい匂いでも嗅いだら間違いなく酔うだろう。
一番後ろの席に移動して、窓を邪魔にならないように一段階だけ開ける。

「―――ふぅ」

入ってくる風に思わず息を吐く。
やはり、少し酔っていたようだ。
春の風の心地良さに、密かに感謝する。
過ぎていく見知った景色を、ただ眺めながら。

「次は○×前~、○×前~」

車内アナウンスの後に、運転手の気の抜けたアナウンスが入る。
降車ボタンを押して、また外を眺める。
もうすぐ、待ち合わせの場所に着く。

そう、もうすぐに。



「なぁ、お前、頭大丈夫か?」

俺は、確かにそう答えた。






――― 残したモノ ―――



「そうだな、飛べないよな」

そいつは、そう言った。



バスの乗車賃を支払い、陽射しを気にしながら降りる。
腕の時計を確認しつつ、先を急ぐ。
簡素な住宅外の間を進む。
道で遊ぶ子供達の声と姿を目にして、思わず温かくなる。

「・・・・・・懐かしいな」

西日がきつくなってきている。
着ている服の所為か、鬱陶しさはさらに跳ね上がった。
溜息をつきつつ先へと進む。

「あ~そうだったよ」

目の前の階段を見て、ようやく思い出す。
忘れていた訳ではないが、別のことを考えすぎていて、やはり忘れていたんだろう。
そんな、つまらない内心ではあったが、頭を掻きつつ階段を登っていく。



「ああ、飛びたいんだ」

そいつは、確かにそう言った。



たまに一段、次は二段飛ばしと遊びつつ、少し長めの階段を登る。
中頃になる時には、息も切れ切れでだいぶ辛い。
無駄なことはするものじゃないっと、いささか鈍くなっている頭で思う。

なんとか、階段を登りきりようやく一息つく。
買って置いた、本日二本目の珈琲を開け一口、二口と勢いよく飲んでいく。

「・・・はぁ」

まだ、息は切れているが構わない。
煙草を口に含み、火を点ける。
目を閉じ、普段より少し大きく息を吸う。
入ってくる紫煙と吐き出す紫煙は、中々に爽快だった。



「飛びたきゃ、飛べば?」

俺は、そう答えた。



目に入るの景色は、とても静かだ。
そう、とても静かな景色だ。
今日、ここに来ているのは俺だけだからだろうか。
とても、とても静かだ。

煙草をゆっくりと吐きながら、ゆっくりと進む。
もうすぐ、もうすぐ目的地に着く。
でも、この先に行きたくないと、そんなことを思った。
そんなことが出来るはずもないのに。

「―――よう、久しぶり」

見つけたそいつに向かって、一声かける。
返事なんて聞かなくてもよく知っている。

見慣れた名前を指でなぞる。



「―――つまらないことで電話してくるな・・・か」

俺は、確かにそう答えた。







思いついたまま書いた。
書いた後に、ちょっと後悔してる。

参考BGM「oblivious」

いい曲です。

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